対峙
夜の街は静けさに満たされていた。
戦闘に次ぐ戦闘の末、何とか敵を蹴散らしたノクトは、城へと急いでいた。
交差点に差し掛かったその時、瞳の端に捕らえたのは、殺風景なアスファルトに佇む人影――
――ステラ……
ノクトは目を瞠った。
どうしてここに彼女がいるのか。
そんな疑問が浮かぶ前に体は自然とステラに歩み寄っていた。
ノクトの姿を見つけたステラもこちらに駆けてくる。
二人の距離が五メートルほどに縮まった時――
突如ステラの背後に魔方陣が出現した。
金色の光を放ちそれは美しく輝いている。
背後からの光を感じたのか、ステラが歩みを止めた。
哀しげな瞳でこちらを見つめてくる。
どうしてそんな顔をするのか。
ノクトは構わず駆けよろうとした。
しかし自分の内部で抗いきれない闘争心が芽生え、
それが目の前のステラに向けられていることに愕然となり立ち止った。
強い光を感じる。
おそらく背後にはステラとついになるがごとく、
死者の国の光を見た者が継承した魔方陣が、禍々しく輝いていることだろう。
ステラは意を決したようにレイピアを召喚した。
ノクトは反射的に自らも武器を召喚していた。
ステラがこちらを見つめてくる。
その瞳には先ほどまでの悲しみは消え、強い光が宿っていた。
それは敵意以外の何物でもなかった。
ノクトはおのずと理解していた。
自分はステラをここで葬ることになると。
クリスタルを守るために、王国を守るために、
自分と同じく死者の力を有する彼女を倒さなければならない。
それは力を覚醒させた時に悟った「掟」だった。
どうして、出会ってしまったのか。
運命を呪っても仕方のないことだ。
自分たちが惹かれあったのは、同じ力を有するという共通点があったからかもしれないのだ。
しかし、ノクトは知っていた。
自分がステラの力を遥かに凌駕していることを。
それは彼女も知っているはずだった。
なのに自分に剣を向けてくる。
無謀な戦いを挑んでくる。
死者の力を受け継いでしまったがために、
彼女は望まない戦いを強いられている。
そしてその束縛は死ぬまで消えないのだ。
ならば、愛する者の手によって永遠の自由を手に入れたい。
そう、彼女が選んだ道はノクトにとってはあまりに残酷だった。
「ステラ、他に道はないのか?」
ノクトは無駄だと分かっていながら尋ねずにはいられなかった。
しかしステラからの返事はなかった。
代わりに向かってきたのは、ステラが発した魔法攻撃。
真空の刃が空気を切り裂きながらノクトに向かってくる。
武器の盾でそれらを防いだノクトは、エンジンソードを握りなおした。
迷いは消えていた。
おそらく世界は破滅へと向かっている。
最後のクリスタルのために、果てることのない戦乱の時代が始まったのだ。
そんな時代に、死者の力を持ってしまった彼女は、あらゆる悪意にさらされ、利用されることだろう。
力を持つ者にとって死が永遠の安息なら、生は苦痛でしかない。
これから待ちかまえているであろう幾多の災厄を受けるのは、自分一人で十分だ。
目を開き、エンジンソードの柄を捻りあげた。推進剤を噴射しながら唸る剣に祈る。
――どうか苦痛のない死を彼女に――。
そしてノクトは剣を高く振り上げた。
愛しい人の姿を、紅く光る瞳に焼きつけながら―――……。
-END-
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あの対峙する場面、何度見ても、ステラは最初ノクトに駆けよっていこうとしてます。
しかし背後に魔方陣(紋章)が現われて……。
この魔方陣が曲者ですよね。
二人色違いの対立する魔方陣は、やはり二人の持つ力――死者の国から授かった力―に関係するのだと思います。
そして何かの理由で(これが何かはわかりませんが)衝突するんだと思います。
そして二人はこの力に翻弄されてしまう。
あるいは、
ステラは自分の国テネブラエを守るためにクリスタルが必要と考え、ノクトと戦う。
というのも考えられます。
ただ、名門令嬢に過ぎないステラがそこまでするかな…と思い、
ここで登場するのがあの金髪フード男。
彼はステラの兄かあるいは血縁関係にある人物でないかと踏んでます(まったくカンケーないかもしれませんが)。
そしてこのフード男がステラの力を利用し、ノクトを葬ろうとたくらむ。
こんなストーリーかもしれません。
とにかく、二人が戦うその理由が知りたいです。
ところでノクトの剣、エンジンがついてますよね。
あれデビルメイクライのイクシードのような原理なのかなーと思います。
推進剤によって攻撃力が増すような…?
novel