SOMNUS

ライトニングの決意





久しぶりの休日。ライトニングはいつもより一時間遅く起きた。
少しカーテンを開けた窓から差し込む光は明るい。いい天気だ。

――今日は掃除でもしようか。
そう考えながらベッドから起き上がって腕を上げ大きく伸びをすると、顔を洗いにバスルームへ向かう。
すると、そこには、鏡とにらめっこをしているセラがいた。
指の端に何かくっつけている。

「セラ、それはなんだ?」
「えー? なにって、『付け睫毛』だよ」
鏡に向き合っているセラは振り返りもせずに答える。真剣そのものだ。

「つけまつげ?」
「うん、わたし睫毛少ないから。ほら、どう? 可愛くなった?」
セラが振り返る。
そこには一段と化粧が濃くなった印象の彼女がいた。
ライトニングは返事に詰まる。

「セラは付け睫毛なんかしなくても十分可愛いよ」 本心からの言葉だった。
しかしセラは不服そうに顔を膨らませる。こういうところはまるで子供だ。
「おねえちゃんはいいよ。何もしなくても睫毛は多いし長いしカールしてるし」

神様ってずるい。そう言いながらバスルームから出ていくセラをライトニングは複雑な面持ちで眺めた。

化粧なんてほとんどしなかったセラが最近色気づいてきたのは、あの男の所為に違いない。
「スノウ」とかいう、ノラの大将で街のゴロツキだ。
あの男と出会ってから、セラは変わった。
ノラの蓮っ葉な女たちに触発されて、スカートの丈もどんどん短くなり、ルージュを塗るようになった。
そうした格好が男の目にどう映るのか、あの子はまるでわかっていない。

ライトニングは小さくため息をついた。
そしてキリリと唇をかみしめ視線を上げた。

――まずはあの男を何とかしよう。

そう、鏡の中の自分に向けて決意表明した。












end.






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